その腹筋運動,腰にばかり負担が掛かり腰痛の原因になっていませんか

腹筋を鍛えるために,まず,多くの人がエクササイズに取り入れる種目が腹筋運動 (シットアップ)です.

特に,学生時代に運動部に所属していたという人は,腹筋運動を100回とか200回を筋トレの度に行っていたという人もいるかと思います.

今回は,そんな腹筋運動が本当に意味があるのかどうか考察を行いたいと思います.

回数の多いシットアップ

そもそも,なぜ回数の多いシットアップがここまで幅を利かせているか考えます.

トレーニングで,負荷を高くする方法としては,(1)重量をあげる方法(2)回数を増やす方法(3)正しいフォームで行う方法,の以上3つが挙げられます.

(1)に関して,シットアップでは,その運動の特性から重量をあげる方法は困難であることが推察できます.これは,腹筋をする際に「重量」となるのは上体であり,状態だけ選択的に体重を増やすことは,別途,重りやダンベルを扱わない限り困難であるためです (重りやダンベルを扱えば,重量をあげることは可能ですが,シットアップに関して重量を扱うということをしている人はほとんどいません).

(2)に関して,シットアップで最も一般的に取り入れられている方法であり,一番間違った方法です.回数を増やせば負荷があがるのは当然ですが,その分フォームが崩れていきます.トレーニングを日常的に行っている人なら分かると思いますが,フォームが崩れるということは,必然的に怪我をするリスクが高まるということを意味するため,「フォームが崩れない回数で,異なった方法で負荷を高める」ことが重要となります.

(3)に関して,シットアップでは最も効果的な一方で,最も軽視されている方法です.他のトレーニングでは,基本に沿ったフォームで行うことを非常に重要視されるはずなのに,なぜかシットアップでは軽視されがちです.これは,シットアップが,ベンチプレス,スクワットなどと違い,フォームを意識しなくても手軽にできてしまうという問題点があるためです.

シットアップの間違った例

以下に間違ったシットアップを示します.

  • 上体が膝に着くまで上げて,床につくまで下げるシットアップ
  • 床に着いた反動で起き上がるシットアップ
  • “こなすこと”が目的となっているシットアップ

まず,上体が膝に着くまで,床につくまで下げるシットアップですが,それでは腹筋への刺激が十分に入っていません腹筋の刺激が入る上体の角度は非常にシビアであり,私たちが考えているものよりも非常に狭いのです.

次に,床についた反動で起き上がるシットアップですが,これはほぼ効果がありません.昔,某テレビ番組で腹筋の回数を競う企画が行われており,その競技者は今回のフォームで行なっていましたが,怪我をするリスクが非常に高いため,真似しないことを強く推奨します.トレーニングの基本は,「重力と逆方向に重りが動くときは早く (=上体が上がるとき),重力と逆方向に重りが動くときは早く (上体を下げるとき)」ということであり,今回のフォームはこの基本原則に強く違反しています.

最後に,“こなすこと”が目的となっているシットアップに意味はありません.トレーニングでは,「どこの部位を鍛えているかを意識すること (=マインドマッスルコネクション)」を強固に意識する必要があるめ,その意識がないとただの腰を曲げ運動になります.

正しいシットアップを実施するために

正しいシットアップをする上で,多くても15回程度しかできないフォームを身につけることが重要となります.そのために,色々なテクニックがありますが,まず気をつけて頂きたいことは以下になります.

  • 腹筋への刺激を常にいれること
  • 素早く上体を起こして,ゆっくり上体を戻すこと

一点目に関して,言うことは簡単ですが,まずが自分で探してみましょう.腹筋の刺激が入り始める点から,刺激が抜けるか抜けないかの境目まで上体を起こします.これが,腹筋の有効範囲であり,この範囲で運動を続けていくことが重要となります.

二点目に関して,前述した様に,他のトレーニングでも基本原則である,「ネガティブムーブメント意識」を腹筋に取り入れましょう.

以上の2点を意識すれば,必然的に腹筋で20回以上することが困難になるはずです.そうすれば,必然的に,腰にかかる負担も少なくなり,腹筋運動をする潜在的な目的の一つである「腰を守る」ということに逸脱して,腰を痛めるという確率を劇的に減らすことができると思います.

終わりに…

シットアップについて,以前に見たニュースだと,バスケット協会は腹筋運動を腰を痛めるという理由から非推奨にした様ですね.この問題の潜在的な要素として,指導者が運動の特徴を理解しないで,回数を過度に重視したトレーニング指導を行っていたということも挙げられ,トレーニング指導を行う人の指導の向上も課題である感じました.

今回,この記事を読んでいただいた方は,くれぐれも回数を重視したシットアップではなく,フォームを意識したシットアップで腹筋運動を行いましょう.

関連記事