【サプリメント解説】筋肉への直接的なエネルギー源であるATPとは

生物の体内で生成される極めて重要な化学物質にアデノシン三リン酸 (Adenosine TriPhosphate, ATP)という物質が存在します.

今回は,ATPのトレーニングに対する作用について皆さんに公開します!

アデノシン三リン酸 (ATP)とは

ATPとは,「エネルギー通貨」と呼ばれる物質であり,地球上に住んでいるほとんどの生物の体内に存在します.このエネルギー通貨と言われることから推測される通り,生物が生きていくための様々な行為の大元にATPは関与しており,そのために体内で生成されています.

ATPは,3つのリン酸から構成されているのですが,ATPを1つのリン酸とATPからリン酸が一つなくなったアデノシン二リン酸 (Adenosine DiPhosphate, ADP)に分解する段階でエネルギーが発生し,このエネルギーを元に生物は活動しています.

ATPは,そのままの形ではなく,グリコーゲンや脂肪となることができます.これにより,ATPはグリコーゲンや脂肪となることで体内に貯蓄することが可能となり,また,引き出すことも可能となります.

以上より,ATPは比較的自由自在に貯蓄/引き出しが可能であり,また,ATPを分解することでエネルギー源を取り出すことから,ATPはエネルギー通貨と呼ばれています

ちなみに,人間の体内には,数分間分の活動に耐えうるATPしか貯蔵されていない様なのですが,体内でATPを作るための種々の反応が行われることにより,人間は絶えず活動することができるという訳になっています.

ATPの役割

以上で述べてきたATPは種々のエネルギー源になるのですが,我々,トレーニーにとって重要なことはATPが筋肉を動かすためのエネルギー源になるということです.すなわち,運動を連続的に続けるためには,如何にしてATPを継続して生成するかが重要となります.

ATPを合成する経路には,運動方法により,「ATP-CP系」,「乳酸系」,「有酸素系」の3つに大別することができます.

ATP-CP系

ATP-CP系は,短時間で爆発的な力を発揮する際に稼動する経路になります.

前述した通り,体内にはごくわずかのATPしか保存されていないため,急激な力を出力するとそれに応じてエネルギーも消費されるため,瞬く間に体内のATPが消費されますそれを防ぐために,筋肉にあるクレアチンがリン酸と結合してクレアチンリン酸となり,この物質がADPにリン酸を与えることでATPを再合成するのに寄与します.

以上より,大きな力を発揮するほど,筋肉中のクレアチンは消費されてしまうため,トレーニング後にもクレアチンは摂取した方が良いということですね.

ATP-CP系に該当するトレーニングは,パワーリフティングやウェイトリフティングになるでしょう.

乳酸系 ( = 解糖系)

乳酸系は,一般的には解糖系とも呼ばれ,30-60秒の筋収縮を可能とします

トレーニング中に,急激に筋肉中のグリコーゲンが枯渇するとグリコーゲンが分解した化学物質であるピルビン酸は乳酸へと還元されます.このとき,同時にエネルギーが発生し,ATPの再合成に用いれらます.

乳酸系に該当するトレーニングが,一般的な筋力トレーニングに分類されるものになります.

有酸素系

有酸素系は,長時間の運動を可能とします

乳酸系で説明したピルビン酸や有利脂肪酸から分離した化学物質が体内の複雑な経路で処理されることによってエネルギーが発生し,このエネルギーがATPの再合成に寄与します.このエネルギーは,エネルギー量が非常に大きいため長時間の運動を可能とします.

有酸素系という名前から分かる通り,この経路は酸素が必要であるという特徴があります (ATP-CP系,乳酸系は酸素が必要ではありません.).そのため,根本的に,ATP系,乳酸系と異なり,短時間で急激な力を出すということには適していません.

ATPに期待できること

以上で示した通り,ATPにより筋肉の運動能力を引き出すことが可能となります.

特に,ATP-CP系,乳酸系で示した通り,ATPを摂取することで直接筋肉が大きくなるということはありませんが,筋トレ中のパフォーマンスが向上することにより,副次的に筋肥大を促すということは十分に考えられます

実際に,以上の効果を踏まえて,サプリメント大国であるアメリカでは1990年代初頭からサプリメントとして販売されており,その影響もあり,日本でも徐々に広まりつつあるサプリメントですね (個人的には,HMBの次のサプリメントにはATPがくるのではないかと考えています.).

終わりに…

ATPはエネルギー通貨ということもあり,パフォーマンスアップには非常に効果を見込めるサプリメントですね.

特に,挙上重量が伸び悩んでいる種目を実施する前に摂取すると効果がありそうですね!

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