トレーニングでは,重りやアタッチメントを「握る」という動作を行うため,多かれ少なかれ握力を稼働することになります.
鍛える部位によっては握力を関与させないことが重要である一方で,背中トレなどでは「引く」動作をする都合上,どうしても握力を関与させる必要があり,背中の筋肉よりも握力が先に限界を迎えるという現象が多々発生します.
この問題を解決できるトレーニング道具がリストストラップです.今回は,リストストラップの特徴,使い方,選び方について皆さんにご紹介します.
リストストラップとは
リストストラップは,英語で「wrist strap」で「手首に巻く吊り革」を意味します.
このままではよくわからない可能性が高いですが,リストストラップとは手首に巻いた状態で,片側から吊り革が出ている状態を指しています(使用したことがある人なら,これでなんとなくどのようなものか理解できると思います).
この片側から出ている吊り革を,ダンベル,バーベル,アタッチメントに巻きつけることで握力を補助できるようになります.このため,慣れるまでは,どのように巻きつけるかで悩むことがありますが,慣れてしまうと,非常に手軽に握力を補助できるというメリットがあります.
また.価格がそこまで高くない製品が多いのも魅力的であり,このことから,トレーニング初心者のうちから勧めることができるトレーニング道具です.
リストストラップとリストラップの違い
以上で説明したリストストラップは以下に示すトレーニング道具です.
上の写真は,ゴールドジムのリストストラップですが,片側が,もう片方側を通せる様になっており,片側を通した状態で手首に巻いて使用することで握力を補助します.
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以上の動画では,Tバーロウでリストストラップを使用しているのが確認することができます.このように使用することで,主に握力の補助を目的として使用できます.
一方,非常に名前が良く似たトレーニング道具に「リストラップ」というものがありますが,こちらは以下に示すトレーニング道具でプッシュ系 ( = 押す動作)の種目で手首を守るトレーニング道具となっています.
恐らく,ジムに通っている人は少なくとも一回はリストラップを使っている人を見かけたことがあるのではないでしょうか.
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以上の動画では,主にベンチプレスとショルダープレスでリストラップを使用しているのが確認することができます.このように使用することで,主に手首の補助を目的として使用できます.
リストラップは,手首が擬似的に太くなるようになります.物理的に考えると,手首の曲がりにくさを示す断面に二次モーメントは,手首の直径に対して4乗に比例することから,少しでも手首が太くなると,それが手首の安定性につながります.このコンセプトの元に,リストラップを使用することで,プッシュ系の種目で安定性を高めることが期待できます.
リストストラップの効果
握力補助
リストストラップは,握力補助の効果があります.
リストストラップは,前述した通り,ダンベル,バーベル,アタッチメントに巻きつけ,その巻きつけた部分を握ることで,握力を補助する効果があります.ただし,握力を補助するためには後述するように,正しい巻き方で使用するようにしましょう.
トレーニング効率の向上
リストストラップを使用することで,トレーニング効率の向上を期待できます.
リストストラップは使用することで握力を補助できます.握力を補助できるということは,リストストラップを使用する前までは扱うことができなかった重量も扱うことができるようになるということであり,結果としてトレーニング効率の向上を期待できます.
リストストラップはどんなときに使用するか
背中等の部位でのプル系 (引く動作)のトレーニング
背中のトレーニングは,基本的にマシンのバーやバーベルやダンベルなどの重りを引く動作が多いのが特徴として挙げられます.
背中以外のトレーニングでも,例えば三角筋後部のトレーニングでは,重りを引く動作が中心となります.こういったトレーニングでは握力を使ってしまうと背中に刺激が入りにくくなってしまうため,リストストラップの様な握力を補助するトレーニング道具が有効となります.
握力を補助するトレーニング
また,例えば,オルタネイトダンベルカールやEZバーカールなど高重量になると握力の補助が必要になってきます.加えて,レッグエクステンションでも高重量になると,身体が振られてくるため,身体を固定させるという目的でリストストラップを使っている方もいらっしゃいます.
リストストラップの使用方法
リストストラップを初めて使う場合,その使い方は中々難しいです.ポイントとしては,「下から引くトレーニング」と「上から引くトレーニング」で使用方法が異なることを覚えましょう.
デッドリフトやバーベルロウなどの下から引くトレーニングの場合は下から通して上に持ってきてそれを握りこみます.一方,ラットプルダウンなどの上から引くトレーニングの場合は,手前から通して自分の方に持ってきてそれを握りこみます.
つまり,以上の二つをまとめますと,手のひらとは逆から持ってきてそれを握りこめば良いということになります.ただ,頭で考えすぎてもよくわからないと思うため,実際にバーベル,ダンベル,アタッチメントを握り込んで見て,握力が補助できると実感できる向きを身体で覚えるのが一番効率的です.
リストストラップをおすすめできる人/できない人
リストストラップは握力を”補助”するトレーニング道具なので,握力がある程度あることが前提となります.そのため,リストストラップは「おすすめできる人」と「おすすめできない人」が存在します.
リストストラップをおすすめできる人
リストストラップをおすすめできるのは,基本的に,トレーニング初心者を脱して使用する重量が伸びてきた方であると考えています.
自分の握力が足りなくなってきたと感じたら使えば良いのですが,目安としてはデッドリフトのMax重量が80 kg位になったらでしょうか.このレベルになってくると,どうしても握力の発達よりも背中の筋肉の発達の方が早く,背中の筋肉で必要となる重量を素手で扱うことが難しくなります.
この場合には,リストストラップを使用することで,トレーニング効率の向上を期待できます.
リストストラップをおすすめできない人
リストストラップをおすすめできないのは,トレーニング初心者です.
様々な意見があると思いますが,個人的には,トレーニング初心者の内は,軽めの重量でフォームを意識するトレーニングを行うことが重要だと考えています.軽めの重量であるということは,握力で補助できる範囲でトレーニングを実施できるということであり,このときにリストストラップを使用してしまうと,握力の発達が遅れるという問題が発生します.
このため,筋トレ初心者の場合には,まずは素手でダンベル,バーベル,アタッチメントを握る感覚を養いつつ,それにより握力を鍛えるのが重要です.
リストストラップの選び方
材質
リストストラップは,大別すると布製と革製のものがあります.
布製のリストストラップは,価格が安いものが多く,手入れも簡単ですが,製品を選ばないと使用感がフィットしないことが多々あります.
革製のリストストラップは,値段が高いものが多く,手入れが難しいですが,使用感がフィットするものが多いです.
つまり,リストストラップをまず購入する方は布製のものがおすすめで,革製のものは中級者レベル以降の方におすすめです.
厚さ
リストストラップは,製品によって厚さが大きく異なります.
リストストラップは,厚さが大きいほど耐久性が増大します.一方,厚さが大きいということは巻いたときにより握力が必要となるとも表現することができるため,耐久性と握りやすさはトレードオフの関係にあります.
基本的に,リストストラップは消耗品と考える方が良く,耐久性には劣るものの,握りやすさを重視して薄手のものを選ぶのがおすすめです.
縫製
リストストラップは,製品によって縫製が大きく異なります.
リストストラップの耐久性を高める上で縫製は非常に重要です.リストストラップは,その用途からどうしても特に片側の革ひもを通す円形部に負荷がかかる傾向があります.この問題に対して縫製がしっかりしていればこの部分が破損することを防ぐことを期待でき,かつ,革紐自体の耐久性を高めることも期待できます。
種類
リストストラップは,「ラッソタイプ」,「シングルループタイプ」,「チャイナタイプ」,「エイトタイプ」に分類できます。
「ラッソタイプ」は,最もオーソドックスなリストストラップです.「ラッソ」が英語で「lasso」で「投げ縄」を意味しており,円形部を作り,端部の革ひもを通すタイプのリストストラップです.
「シングルループタイプ」は,ウエイトリフター,クロスフィットを実施する方に好まれるリストストラップです.ラッソタイプのものよりも素早く装着できるというメリットがあります。
「チャイナタイプ」は,中国のウエイトリフターがよく使用するリストストラップです.基本的にはシングルループタイプに近いですが,長いべろがついているのが特徴であり,シングルループタイプとラッソタイプの間とも表現できます.
「エイトタイプ」は,超高重量を扱うウェイトリフター,ストロングマンの選手が良く使用するリストストラップです.その使用方法は「巻く」というよりは「連結する」という行為に近く,これにより超高重量を扱うことを可能にします.
リストストラップを使用する上での注意点
使いすぎない
まず,リストストラップを闇雲に使わない方が良いと思います.
これは意見が分かれるところではありますが,個人的には,リストストラップはあくまでもトレーニングを「補助」する道具です.このため,大前提として,リストストラップなしでもトレーニングを実施できる必要があり,「ここぞ」というときにリストストラップを使用するようにします.
リストストラップを使用する頻度が高まると,その分だけ,自分の握力で握ろうとする意識が低下するため,どうしても握力の発達が遅れます.握力の発達は,トレーニングを実施する上で非常に重要であることから,リストストラップの使用は必要なときだけにしましょう.
使用したら洗濯
次に,使用したら洗濯することを強く推奨します.
リストストラップは,汗をかきやすいとされている手首に巻いて使用します.リストストラップはいずれの材質を選択しても汗を吸収しやすく,放置しておくと非常に不衛生であり,場合によっては臭います.
このため,基本的に,汗をかきやすいという人はリストストラップの材質として,洗濯することができる布を選びましょう.
肌を痛めることがある
さらに,リストストラップは肌が弱い方は使用すると擦れて肌を痛めることがあります.
リストストラップは,どうしても高重量の補助で使うため,リストストラップと手首が擦れて手首が真っ赤になることがあります(放置しておけば,数日で回復しますが,結構真っ赤になることが多いので気になる人も多いと思います).これを防ぐためには,リストラップを巻いた状態でリストストラップをするようにしましょう(テーピングも有効です).
終わりに…
リストストラップは,製品によってその使い勝手が大きく異なります.このため,購入する際には,一度試しに使ってみるか,もしくは実際に手にとって選定することが重要です.