トレーニングとは,言い換えるならば「筋肉の破壊と再生」を促している行為であり,トレーニングで筋肉を破壊し,食事,睡眠で筋肉を再生(=超回復)させることで筋肥大を促します.
つまり,トレーニングで身体を成長させるためには,「筋肉をどれだけ回復させるか」が重要になり,その手段の一つとして,グルタミンを摂取することは非常に有効です.
今回は,筋肉の回復をサポートする栄養素であるグルタミンの効果をご紹介します.
グルタミンとは
グルタミンは,タンパク質を構成するL-アミノ酸の一つです(「L」とは,アミノ酸の立体構造に由来する分類であり,一般的に製造されているアミノ酸のほとんどは「L」です).
(「うまみ成分」であるグルタミン酸とは全くの別物である点には注意しましょう.)
アミノ酸は大きく分けて「必須アミノ酸」と「非必須アミノ酸」に分類することができます.
「必須アミノ酸」は,体内では合成されないため,必ず食事から摂取しないといけないことから「必須」と称されており,バリン,イソロイシン,ロイシン,メチオニン,リジン,フェニルアラニン,トリプトファン,トレオニン,ヒスチジンです.Essential Amino Acids(EAA)と表記した方が分かりやすいという人も多いでしょう.ちなみに,EAAの中でもバリン,ロイシン,イソロイシンはBranched Chain Amino Acid(BCAA)
「非必須アミノ酸」は,体内で合成されるため,必ずしも食事から摂取しないといけないわけではないことから「非必須」と称されており,チロシン,システイン,アスパラギン酸、アスパラギン,セリン,グルタミン酸,グルタミン,プロリン,グリシン,アラニン,アルギニンです.
EAAの摂取はもちろん重要ですが,非必須アミノ酸は摂取することで,体調の改善,パフォーマンスの向上に寄与するものが多いです.
その中で,グルタミンは,非必須アミノ酸に分類され,以下の効果を期待できます.
グルタミンの効果
グルタミンの効果は大きく以下の3つがあります.
- 筋肉の同化作用の促進
- 免疫の改善
- 整腸作用
筋肉の同化作用の促進
グルタミンは,筋肉の同化作用( = 筋合成)を促進を期待できます.
そもそも,筋肉は放っておくと,常に異化作用( = 筋肉の分解)が進みます.筋肥大を促すためには,常に異化作用よりも同化作用が優勢になっている必要があります.このためには食事の摂取が有効ですが,例えば,トレーニング後というのは,同化作用を促す上で非常に有効なタイミングであり,その際にグルタミンを摂取するのがおすすめです.
免疫の改善
グルタミンを摂取すると免疫の改善を期待できます.
有酸素・無酸素運動に関わらず,運動強度が向上していくとどうしても免疫が低下する傾向があります.この問題に対して,グルタミンを摂取することである程度の風邪予防に繋がると考えられます.
整腸作用
グルタミンを摂取すると整腸作用を期待できます.
例えば,ボディビルダーのオフの時期に体重を増やすのですが,その際には大量の食事を摂取します.そうなると,特に,腸に負担をかけてしまうため,グルタミンを摂取することで腸への負担を減らします(減量期となると,鶏胸肉とかブロッコリーしか食べないため,増量期になったら腸に負担がかかるのは当然です).腸は免疫を司り,また栄養もそこから摂取されるため腸を健康に保つことは非常に重要です.
グルタミンはどんな人におすすめか
グルタミンは,基本的に全ての人におすすめですが,特に,トレーニング頻度が高いトレーニーにおすすめです.
トレーニングをした直後は,回復をする上で最も効果的な段階であるため,回復を促すグルタミンを摂取することでより効率的に筋肉の超回復を期待できます.このことから,全てのトレーニーがグルタミンを摂取することでより効率的に筋肉を成長させることを期待できます.
以上に加えて,特に,トレーニング頻度の高いトレーニーは,強度の高いトレーニングにより身体の免疫が低下する傾向にあります.このような方がグルタミンを摂取することで,免疫を改善し,風邪をひきにくくすることを期待できます.
グルタミンの摂取方法の例
以前の記事で述べた様に以下の様に私はグルタミンを摂取しています.
- トレーニング中: 10g
- トレーニング後: 10g
私は,一日,20gくらいしか摂取していませんが,コンテストに出場されているボディビルダーの中には,より多くのグルタミンを飲んでいる人もいます.特に,減量期などの免疫力が低下しやすいときに,いつもの1.5倍から2倍程度増やして飲む人もいます.
トレーニング中
トレーニング中の回復力を向上させることを意図して10 g摂取します.
トレーニングの時間は,短いほど望ましいですが,実際は1.5時間から2時間くらいかかってしまいます.その間に種目を立て続けに行なっているため,その間にも回復力は低下し続けます.少しでも回復力が低下して風邪を引くということを予防し,また,筋合成を促進させるという意図のもとにトレーニング中にもグルタミンを摂取します.
トレーニング後
トレーニング後には,筋肉の同化作用 (=筋合成)を促進するという目的と免疫の回復のために10 g摂取します.
トレーニング後は,ゴールデンタイムと言われる様に,プロテインを摂取する上で一番良いタイミングと言われています.その際に,グルタミンを同時摂取することで,ゴールデンタイムでの筋合成の効果を高めるという意図があります.
※1 トレーニング前
トレーニング前に同じく,10g程度飲む人もいます.
トレーニング前のサプリメントは,トレーニングでのパフォーマンス向上のためのプレワークアウトサプリや,トレーニング中の筋分解防止のために炭水化物やBCAAやEAAなどのアミノ酸を摂取することが一般的です.
この際に,グルタミンを摂取することで,アナボリック状態を高めようとする意図があります.
ただ,グルタミンは,トレーニング前に摂取するとアンモニアになってしまうという話を聞いたこともあるため,摂取はよく考えてから行った方が良いですね.
※2 起床後の摂取
セミナー等で全日本トップクラスの選手やプロボディビルダーの話を聞いていると,起床後すぐに5g程度摂取するという人も多い印象です.
これは,朝起きたときは,睡眠時間分だけ飲まず食わずの状態であるため,栄養がかなり不足しがちで筋肉に対して異化作用が優勢となっているためです.また,起床時には,コルチゾールが分泌されるため,前述した異化作用が優勢になっています.このため,グルタミンを摂取することで,筋肉の同化作用 (=筋合成)を促進し,筋肉が分解されることを防ぐという目的があるためです.
グルタミンの選び方
品質
グルタミンを選択する上で,品質は非常に重要です.
グルタミンのサプリメントは,一昔前までは,やや値段の高い一方で,摂取回数,量が多いサプリメントであったことから,非常にお金のかかるサプリメントでした.それが,近年では,多くの新興企業がグルタミンを販売するようになり,その価格も以前と比較するとお手頃価格となっています.
ただし,値段が安いということは,その分だけ品質が悪い可能性が高いと言い換えることもできます.グルタミンは,日常的に摂取し,かつ,摂取量も多いため,できるだけ品質が良い製品を選ぶ必要があり,味の素のAjiPure®︎※のグルタミンがおすすめです.
※味の素の米国法人が医薬品適正製造基準の品質で製造しているアミノ酸に使われるブランド
価格
グルタミンを選ぶ上で,価格も重要です.
前述したように,グルタミンは昔と比べるとお手頃価格にはなっているものの,品質が高い製品を選ぼうとするとどうしても値段が高くなります.このため,どこまでの品質を追求するか,どこまでの値段を許容できるかが重要になり,これらのバランスを加味した上で製品を選択する必要があります.
理想は,品質が高く,お手頃価格のグルタミンを購入することがですが,中々,それが難しという問題があります.
終わりに…
グルタミンは,増量期など,栄養が過多になっているときには,大きな効果を感じにくいというのが実際のところです.ただ,減量期など,栄養素が足りなくなっているときには,ありがたみを大きく感じることのできるサプリメントです.
トレーニングというものは,それ自体で,身体の免疫を大きく低下させている運動であるため,グルタミンは男女問わずトレーニングをしている方,全てにおすすめの栄養素です.